嘘、毒素。
嘘は現実よりも存在感をもって全身にのしかかってくる。毒のように重い。
金曜日にしょうもないことをやらかした。
そのしょうもないことを隠蔽するために、しょうもない嘘をついた。
冷静になれば、すぐにバレる嘘だった。決定的な証拠はない。とはいえ誰の目にもそうとしか見えない、そういう状況証拠が揃っていた。
焦ってついた嘘の強度たるや、全く脆いものだ。
いつもは誠実を心がけている。嘘なんかつかない。
けれど、あの時は動転していた。動転して嘘をつくなんて小学生みたいだ。いや僕はガキンチョなんだな。しょうもない嘘は、心底にあるしょうもない虚栄が生み出したものだ。自分はまだ、しょうもないガキだ。
現実は僕は成人を超え、もう小学生ではない。だから怒ってくれる親や先生はいない。毒を吸い出してくれる人はいない。
咎められずに受け入れられた嘘は、吐き続けなければいけない。
咎められない限り、嘘は現実として存在する。
ずっと、在る。
このところ、ずっと気分が沈んでいた。忙しさ、プレッシャー、乱れる生活サイクル。
部屋はますます荒れ、自分はゾンビに近づいていく。動くだけ、働くだけのウォーキングデッド。
そんなとき自分で自分の腕を噛んで差し込まれた毒で、もう完全にダメになってしまった。蝕ままれて、土日のほとんどを寝て過ごした。
二度と、嘘をつくまい。そう誓う。
ミスをすること、ミスを叱られること以上に、嘘をつくことはつらい。嘘をつき続けることはつらい。
しかし僕に嘘をつかせた虚栄は簡単に矯正できないだろう。だから自分の行動を正していくしかない。
誠実に生きよう。
朝は余裕を持って起きよう。夜更かしはやめよう。
食事はしっかりとろう。部屋は片付けよう。
約束は守ろう。言ったことは必ず実行しよう。
嘘をつかなくてはならないような、しょうもないやらかしをしなくて済むように。
誠実さは、人のためではない。自分のため。もう嘘をつきたくない。
血清はない。